虫の知らせといいまして

何やら良からぬその予感

もたらす虫はどんな虫?

口の端上れど知る人はない

鈴虫松虫くつわ虫

ひたりと鳴きやむその不穏

それも確かにありましょうけど

申したいのはそれでなく

いつの間にやら身のうち巣くい

不思議もたらす謎の虫

上尸、中尸、下尸の三尸

悪業つげ口あの虫かしら?

虫の居所と言いますが

五臓六腑のいずこかに

居座るその虫どこの虫?

誰もが知るが見た人のない

ノミダニシラミ寄生虫

病もたらす害虫それぞれ

そちらも確かに厄介ですが

いまこの時はそうでなく

生まれた時から身のうちにあり

あれこれ騒ぐくしき虫

ぐうぐう鳴くのは腹の虫

カッカするのは癪の虫

悲しみ呼ぶのは肺の虫

喜び踊るは心の虫

悩み生じる脾の虫

怒りを発する肝の虫

恐れおののく腎の虫

脾の聚、肝の聚、積聚、積虫

九虫、由虫、尸虫

蟯虫、悪虫、寸白虫

馬癇、牛癇、鬼胎、血塊

陰気、脹満、小姓、水腫

悪血、噛み寸白、鳴き寸白

胸虫、肺虫、風邪の虫

背虫、燗虫、小児の虫

黒虫、耳虫、欠伸の虫

笠虫、肝虫、脾臓の笠虫

汗の虫、脾臓の虫、腎冷の虫

陰虫、霍乱の虫、悩みの虫

気絶の肝虫、腹痛の虫、腸の虫

昼寝の虫、腰抜の虫、腰板の虫、

大酒の虫、クツチの虫、頓死の肝虫

肺積、心積、肝積、脾積

気積、腎積、胃積、桂積、

陽の亀積、陰の亀積、胞衣の血積

打身の血積、脾臓の血積、大病の血積

不調もたらす虫どもを

挙げ連ねればこの通り!

虫が好かぬはその通り

なぜかなんでか気に入らぬ

心操る変な虫

抗いきれる人のない

知らないあいだに棲み着いて

影響及ぼす面妖さ

切って離せぬ心虫の虫

知って語れぬあらぬ虫

喜怒哀楽を糧に餌に

育って熟す虫どもに性根心根

食い破られたることのなきよう

向後くれぐれお定めに!

善事善行、悪事悪行

虫を養いすぎますことのなきよう

どうかどうにか御身お厭いなさいませ

自今よくよくお心得!